わきが(正式には腋臭症)は腋窩部毛包に付着しているアポクリン汗腺からの分泌物が皮脂と混ざり表皮細菌が分解することにより特有の臭いを生じます。 この臭いはエクリン腺からの汗の臭い(酸っぱい臭い、汗臭いと表現されることが多い)とは異なる特有の臭いがします。 まとめるとアポクリン汗腺の活動が強い→腋臭症エクリン汗腺の活動が強い→腋窩多汗症となります。ただこれらはしばしば混在します。
診断には初診時に実際に臭いを確認できれば診断は容易でありますが、症状が軽い方などは診察時に腋臭を確認できない場合があります。 この場合は問診が大切になってきます。
- 発症時期(通常は6~7歳頃から始まり20歳前後がピークとなり、壮年期に改善していく)
- 家族歴の有無。(優性遺伝です。)
- 耳垢が湿っているか(耳垢が湿るのは、耳の中にあるアポクリン腺からの汗が原因です。幼少の頃から発達しているので、腋臭臭が発生する思春期以前から確認できます。)
- 腋窩多汗症の有無。(しばしば腋臭症と腋窩多汗症は混在するため、また臭いを客観的に評価することは困難な時でも汗の量は客観的に評価しやすいためです)
- 家族、他人から指摘されたことがあるか(腋臭症は自覚症状が無い場合が多く、他人に指摘されて初めて認識することが多い)
- 手術歴(手術方と効果、再発時期、自己臭妄想の鑑別)
等を参考に問診にあたります。
治療法としては大きく分けて
があります。 今回は手術治療とその歴史についてお話しさせていただきます。 現在腋窩多汗症および腋臭症に対する種々の手術療法が行われています。 確実な治療効果を得るためには、皮下脂肪織のみならず真皮下層~中層にあるアポクリン汗腺・エクリン汗腺を確実に取り除くことが最も重要です。 確実な治療を行うためには残存皮膚の厚みを1mm程度と薄くなるまで皮下組織と真皮下層を摘出する必要があるため下床の脂肪織への生着には植皮術と同様の圧迫固定が必要となるのです。つまり、残存する皮膚の厚みが治療効果と密接にかかわっているわけです。 しっかりとした手術をすると汗腺の存在部位と腋毛根の存在部位が近いため腋毛がほとんどなくなります。後述する血腫による皮膚の壊死を怖がり除去する部分が少なすぎると不完全な治療となりやすいのです。
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切除法
この方法は最も古典的でワキの皮膚ごと汗腺をとってしまう手術です。術後の傷、瘢痕も最大です。アポクリン汗腺のある腋窩部皮膚を長さ15~20cm、幅3~5cmの大きさで紡錘形に大きく切除する方法ですが、腋毛部全体を切除することは困難で中央部のみの切除となることも多くあります。 -
吸引法
脂肪吸引器に取り付けた金属の管を数mmの切開部から皮下組織内に挿入し、吸引力によって皮下脂肪組織を吸い出す方法です。脂肪織内のアポクリン汗腺は確実に吸引できず、腋毛の再生とともにアポクリン汗腺が再生することが多いのです。さらにこの方法に高温を発生する器具を取り付け、真皮のより浅いところにあるアポクリン汗腺やエクリン汗腺を熱で破壊する超音波メスによる方法も開発されました。吸引法と比較すると治療効果は出やすいのですが、表皮直下の真皮に熱が加わりすぎると熱傷となるのでアポクリン汗腺・エクリン汗腺を完全に破壊することは困難なようです。なお真皮内の毛細血管は温存されるため、比較的軽い圧迫固定ですみ、手術後の回復も早いのが特徴です。腋毛残存します。 -
剪除法
腋窩部皮膚のしわに合わせ1~3か所に長さ4cmほどの切開部から皮膚を指で反転させ小剪刀で少しずつ皮下組織を切り取っていく方法です。
腋窩部皮膚全体を厚さ1mm程度になるまでしっかり取り除くことができれば、アポクリン汗腺・エクリン汗腺が除去され効果も確実で術後に腋毛は再生しないのです。
なお術後はタイオーバーなどを用いた確実な圧迫固定が必要となります。
腋窩中央部のみの手術では周囲にドーナツ状に腋毛・汗腺が残りやすいので、時間をかけて腋毛部皮膚全体を、しっかりと行うことがポイントです。
しっかり行うと腋毛も無くなります。 -
切除法
カミソリの刃を取り付けた皮下組織削除器を2cmほどの切開から真皮直下の脂肪組織へ挿入し、腋窩部皮膚の裏側からアポクリン汗腺・エクリン汗腺ををまとめて削り取る方法です。
皮膚全体を厚さ1mm程度まで一気に削ることが可能で、アポクリン汗腺・エクリン汗腺が除去され腋毛もほとんど再生してこないため効果が確実です。
剪除法と同様に術後の確実な圧迫固定が必要となります。
アテナクリニックではこの手術方法で行っています。
手術法による合併症について
1)皮下出血および血腫形成
吸引法など皮下脂肪織のみの手術方法であれば真皮下層の毛細血管は温存されているため、皮下に血腫が起こった場合であっても皮膚の結構は保たれるます。
一方、確実な治療を目的とする剪除法や皮下組織削除法においては、皮下組織と真皮下層は摘出されてしまい真皮下層の毛細血管はなくなるため、皮下血腫が形成された場合には皮膚の壊死を引き起こすこととなります。
ただ剥離する層を間違えなければ血腫形成することはほとんどありません。
したがって薄くなった皮膚ほどしっかりとした圧迫固定と安静が大切となります。
2)細菌感染
術前に腋毛処理などを繰り返し行っていると、毛孔部に赤色の丘疹や膿疱が多発することが多い。
その場合には細菌感染を起こし皮膚の壊死を起こすことがあるので、手術前の腋毛処理は行わず清潔にしておくように指示しておいた方がよいと思われます。
また、残存する毛孔に細菌感染を起こすことがあるため、術後に痂皮などが消失した後には石鹸などでしっかりと創部を洗うことが大切です。
ただ腋窩リンパ節があるため余程、不潔な手術をしないかぎり感染は起こりません。
3)肥厚性瘢痕とケロイド形成
患者自身の体質に左右されるため術前に予防接種や水痘・外傷の瘢痕を確認し、瘢痕が目立っている場合には術後なるべく早期に治療が必要であることをあらかじめ説明しておく必要があります。治療としては圧迫療法・副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)やへパリン類似物質などの軟膏療法・ステロイド剤の局所注射・トラニラストなどの内服療法などがあることは言うまでもありません。
4)しわの形成
腋窩部皮膚は元来しわが多い部分であり、しわの程度は細かいしわが多い方、大きく深いしわが数本ある方などさまざまです。
特にもともとしわの多い方・皮膚に弾力のない方の場合やケロイド体質の方の場合には
術後に創部が硬く縮み、硬いしわとして残りやすくなるようです。
術後皮膚の拘縮が強い場合には、腋窩部皮膚を伸展すると予防できることが多いのです。
5)色素沈着
腋窩部は擦過しやすい部分であるので、もともと色素沈着がある方が多い部分です。
術後には赤味を伴う色素沈着が起こる事が多いのです。
特に残存する皮膚の厚さが薄いと色素沈着が強く出やすいのです。
色素沈着が残る場合がありますので、軟膏療法を行う必要もあります。
6)面皰・粉瘤の形成
切除法以外の手術の場合には、皮表に毛孔が残存するため手術数ヶ月以降に面皰や粉瘤の形成をきたすことがあります。
細菌感染を引き起こす原因ともなるので術後は清潔にすることを心がけ、毛孔の開大を認めた場合には抗菌外用剤などを使用し感染の予防を行いたいが、粉瘤様の皮下腫瘤に対しては外科的摘出が望ましいのです。
7)しびれ
皮下組織を除去する際に皮膚の表面に付着している知覚神経は切断されてしまうため、術後皮膚の表面や周囲に軽いしびれや違和感・チクチクした感じが残ることがあります。
また術後に腋窩部を強く圧迫した場合には、肘から先に一時的なしびれが生ずることがあります。
いずれも数ヶ月~1年程度で回復してくるのが通常です。
【手術とその後】
- 局所麻酔の手術で1~2時間程度です。
- 当日はガーゼで腋部分を固定させていただきます。
- 10日~2週間後に抜糸にご来院いただきます。
- 抜糸後一定期間はワキを広げるストレッチを行っていただきます。















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